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まとも

歌や本の感想・考察など 今は宇多田ヒカル中心です

宇多田ヒカル「二時間だけのバカンス」の歌詞に込められた意味について~クローゼットに秘めた想い

宇多田ヒカル

 宇多田ヒカルさんが2016年9月28日に、およそ8年ぶりにニューアルバム「Fantome」をリリースしました。当日に買いましたがすごく良かったです!!

 

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その四曲目に収録されている「二時間だけのバカンス  featuring 椎名林檎」について今回は考察したいと思います。

 

アルバムを順番に聴いていくと、「道」でテンションが上がり、からの「俺の彼女」でふむふむと聴きこみ、からの「花束を君に」で癒され、…でこの曲になります。

 

椎名林檎さんとPVでも共演しています。

「バカンス」という名前どおり南国っぽい雰囲気がただよう曲ですが、歌詞の内容はけっこうドロドロ切ないです。

 

宇多田ヒカル「二時間だけのバカンス featuring 椎名林檎」(Supported by Panasonic VIERA 4K UHD TV)【パナソニック公式】 - YouTube

 

いろいろな解釈があると思いますが、PVや歌詞を見る限りでは「奥様どうしの不倫」ととらえられます。

奥様どうし、つまり女どうしです。

不倫というとなんかイケない感じがしてしまうのですが、おたがい節度をわきまえた二時間だけの火遊び…いや、息抜きといったところでしょうか。よくあるケースの「遊びのつもりが一線を越えてしまう」なんてことはなさそうです。

不倫といっても「女どうし」と限定したのはなぜか。まあ、まずはPVの感じですよね。笑 宇宙船でバカンスを愉しむ宇多田さんと椎名さんがソファで木星を眺めながら別れを惜しみ、かなりアブない雰囲気を醸し出しています。

 

でもそれは正直、決め手ではありません。

このアルバムには、二曲目に「俺の彼女」という男女恋愛を扱った曲、四曲目に「二時間だけのバカンス」、そして六曲目に「ともだち」という同性愛者の愛情を切なく歌った曲が収録されています。(「ともだち」については宇多田さん自身が同性愛をテーマにしていると明言されています。)

「ともだち」の方は(男どうしなのか女どうしなのかハッキリ書かれていませんが)歌詞の感じからおそらく「男性の」同性愛者の恋愛感情を歌った曲ではないかなと個人的に思っています。(だけど、本当にどうとでも解釈できるんです!!)

 

とりあえず「ともだち」の方を「男どうしの同性愛の曲」と仮定します。そして「二時間だけのバカンス」は、「ドレス」「ハイヒール」といった言葉や、全体的な歌詞の感じから、「ともだち」と比べると女の人っぽい印象をうけます。(もちろんこれもどうとでも解釈できますが)ここで、PVをヒントに「女どうしの同性愛の曲」じゃないかとこれも仮定してみます。

 

すると、二曲目に「男と女の恋愛

    四曲目に「女と女の恋愛」  

    六曲目に「男と男の恋愛

 

という構図が浮かび上がります。

仮定で成り立った構図ですが、なんだか綺麗な構造になっていませんか?

わたしはこの構図を決め手にして、「これは女どうしの曲ではないか」と解釈しました。

また、さきほど「イケない」「アブない」という表現をしましたが、あれは醸し出されるエロ~い雰囲気に対して使ったもので、もちろん同性愛がアブないというわけではありません。

不倫は、まあ、双方の価値観によりますね…笑

 

クローゼットの奥で眠るドレス

履かれる日を待つハイヒール

 

「ドレス」「ハイヒール」といえば、とっておきの日におめかしするための「非日常」のモノですよね。それは「日常」のあいだ封印しています。これからそれらを身に着けて「バカンス」に向かうんだ、というワクワク感が感じられます。

 

あと、「クローゼット」とは「自分のセクシュアリティ性的指向)をふだん隠しているLGBT」という意味でも使われます。「ドレス・ハイヒール」といったものは、一般的に女性が身につけるものですが、それらをふだん封印しているということは、たんに「非日常」を封印しているだけでなく、みずからの「女性性」を封じ込めていることに他なりません。

ん?女性性をふだんは封印…?じゃあふだんは男性的だということ?

そういうわけではありません。

 

女性同性愛者のかたは、「女性として」女性が好きな方です。つまり、その人の本来の女性性は、「女性が好きな/男性は友達としか思えない」ものなのです。

男性と愛し合って結婚するには、その本来の女性性を封じ込め、その上から「つくりあげた女性性」で蓋をしなければいけないのです。

裏を返せば、同性愛者のかたもさまざまな事情で異性と愛し合わねばならない時、そういう風に蓋をすればなんとかなるケースが多いのです。

 

この「奥様」はおそらくそういった方法で結婚し、子供の世話をしながら日常を贈っているのでしょう。でも、不幸せということはなく、旦那様のことはパートナーとして心から大切に思っているのでしょう。

 

物語の脇役になって大分月日が経つ

 

ここらへんちょっと宇多田ヒカル、ある意味自分のことも織り交ぜてるんじゃないか?と思ったりします。

でも今年の下半期はまた主役級になってましたね(^^)

 

忙しいからこそ たまに

息抜きしましょうよ いっそ派手に

 

いよいよバカンスの始まりですね。

ここからサビです。

 

朝昼晩とがんばる 私たちのエスケープ

思い立ったが吉日 今すぐに連れて行って

二時間だけのバカンス 渚の手前でランデブー

足りないくらいでいいんです

楽しみは少しずつ

 

ついに仮面の女性性を脱ぎ捨て、本来の女性性を身にまとった奥様ふたりが女どうしの逢瀬を遂げます。

PVもここらへん、勢いがあっていい感じです。

ランデブー」というのはフランス語(rendez-vous)で、恋人どうしが時間と場所を決めてデートすることをさすのは周知のことですが、実はもうひとつ意味があります。

「宇宙船どうしの接近・遭遇」です。

これでPVの宇宙船も納得…

 

渚でランデブー…いいですね。

「渚」という場所自体も海と陸とが出会う場所ですから。

 

 

 お伽噺の続きなんて誰も聞きたくない

 

「お伽噺」とはさっきの「物語」とリンクしていて、宇多田ヒカルが一世を風靡していたころのことをさすのでしょう。(今も十分すごいですが、今は落ち着いた感じですもんね!)

みんな「非日常」の話がドキドキするから好きなわけで、王子様と結婚して平和になったあとのシンデレラの話なんて誰も聞きたくない。

宇多田ヒカル自身もそんな「日常」を手に入れたわけですが、やっぱり世間はシンガー、クリエイターとしての「非日常」の宇多田ヒカルにドキドキし、それを求めるわけです。

 

アルバム「ULTRA BLUE」でも、自身の女友達に対する「想い」を込めた歌(『making love』)や、『BLUE』という曲では「女の子に生まれたけど 私のいちばん似合う色はこの色」という箇所があったりしました。が、そういった「性」のテーマがこの「Fantome」ではかなり色濃くあらわれています。

宇多田ヒカル自身も優しい日常を大切にしつつ、まだまだ内に秘めたモノを表現していきたい気持ちがありそうですね。