まとも

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宇多田ヒカル「ともだち」の歌詞に込められた意味について~叶わなくとも愛せてよかった

宇多田ヒカルさんが2016年9月28日に、およそ8年ぶりにニューアルバム「Fantome」をリリースしました。当日に買いましたがすごく良かったです!!

 

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その六曲目に収録されている「ともだち」について今回は考察したいと思います。

 


この曲からアルバムの後半部分に入っていきます。

 

さて、「ともだち」というタイトルにどんなイメージを思い浮かべるでしょうか。

学校の友達?幼馴染?思い浮かぶその人は、どんな人でしょうか。

おそらく、同じくらいの歳の同性の人なのではないでしょうか。

もちろん異性(または、それ以外)の友達や、年の離れた友達もいいと思います。

でも、ただひとつ言えるのは、あなたはその人に恋愛感情は抱いていない、ということです。

 

恋愛感情ってそもそもなんだ?とか考えだすとあれなんですが、たぶんあの、経験した人にはわかる、その人のことで心が囚われて、胸が苦しくなるアレです。

経験した人は思い出しながら、そして経験したことない人はイメージしながら、聴いてみたらいいんじゃないかな、と思います。

 

笑顔見れる 距離にいれる

それだけでいい

 

おしゃれで美しいテンポにのせて、歌がはじまっていきます。

あれ、「ともだち」というから友情すばらしい、とか、絆とか、仲間とか、そのような爽やかな曲かと思っていたら、笑顔が見れるほど近しい距離=君と友達関係にあること、それだけでいい…「それだけ」ということは、心の奥底で本当は、それ以上の関係を望んでいるということです。

 

友達なら側にいてもおかしくない

 

この箇所で、 本来は側にいることがおかしいのだ、ということが分かります。

想像してみてください。あなたが恋愛感情を抱いている人の隣にあなたがいるとして、その人と付き合っていたら「おかしくない」ですが、付き合ってもいないのに側にいるのはおかしいですよね。

 

好きだ!付き合いたい!と思っている人と、付き合うことなしに、毎日お弁当を食べたり遊びにいったりする。その時、「おかしいな」と感じて、心がしんどくなったり、変に意識したりしてしまう。でも多分側にいれるなら、そんな「おかしさ」に苦しんでいても、側にいることを選ぶでしょう。なぜなら、好きな人の顔を見る喜びが、その苦しみに勝ってしまうからです。だから「友達」を装ったまま、側にいる。

 

君に触れるあいつ見てる

報われない想いばかりが募る夜更けは

どうしたらいい?

 

「報われない想い」と、はっきり恋愛を示すワードが入ってきました。

 

側にいて、お弁当を食べたり、遊ぶことができても、「友達」ではできないそれ以上のこと…「触れる」ことをしたいな、と思って、でもできなくて、むやみに嫉妬してしまう。

 

あの人にとって自分は「友達の対象」でしかないけれど、あいつはあの人にとって「恋愛対象」である。そんなどうしようもないことにイライラしてしまう。

 

Oh 友達にはなれないな にはなれないな Oh

Oh 何故ならば触りたくて仕方ないから Oh

Oh 友達にはなれないな にはなれないな Oh

もう君の一番じゃないと意味がないから Oh

 

サビです。

 

あの人からしたら、自分は「ただの友達」。でも自分からしたら、あの人は、友達として装っているけれど、本当は「恋愛対象」。

 

だから触りたいし、一番でありたい。

でも自分はその存在になれない。

 

胸の内を明かせたなら いやそれは無理

とても上手に嘘つけるのに 心は馬鹿正直

 

もうこんな思い抱え続けても苦しいから、一筋の希望の光を信じて、告白してみようとも思うけど、「いやいや無理だろ」と笑いつつ立ち止まる。

 

「いやそれは無理」のところの歌い方がちょっと鼻で笑っている感じで、深刻に歌うよりむしろこちらの方がグサッときます。

 

昼、人前で「友達」としてうまくやっているつもりが、夜一人になるとやりきれない感情が自分でも驚くぐらい噴出します。

 

キスしたい ハグとかいらないから

let me have one kiss やっぱり…

 

 キス=恋人と、ハグ=友達と、することだとはっきり分けられていますね。

 

ひとつ、一回だけでもいいから、その二つを隔てる線を超えてみたいと思った時に、「やっぱりこの人のことが好きなんだな」と確信します。

 

Oh 友達にはなれないな にはなれないな Oh

Oh 何故ならば触りたくて仕方ないから Oh

Oh 友達にはなれないな にはなれないな Oh

もう君に嫌われたら生きていけないから Oh

 

 恋人は、一般的に、唯一無二の存在です。

対して友達は、一般的に複数いるのが当たり前です。

 

友達の一人に嫌われたら、悲しいけれど他の友達と仲良くすればいいだけです。

しかし、恋人にしたい君に嫌われたら、もう他がありません。

 

また、自分だけ悲しいならまだいいけれど、想いを告白されたことで相手に「嫌悪」というマイナスな感情を無為に味わってほしくありません。いままで仲良くしていた友達から急に告白されたら、きっと大きなショックを受けるだろうな…と思うと、「もう、今の平穏なままでいいや」というのに落ち着きます。

 

恋愛において、一番イヤなのは、好きな人がイヤな思いをすることです。

そうでなかったらそれは恋愛ではないと思います。

 

恥ずかしい妄想や 見果てぬ夢は

持っていけばいい 墓場に

 

叶わないことを、君と思いが通じ合ったらしたいことを、頭のなかで延々と繰り広げます。それは所詮「妄想」や「夢」ですが、それがないとやっていけない時があります。

 

君にイヤな思いをさせないためには、一生そのまま、自己完結で終わるしかない…というと悲しく聞こえますが、「愛せたこと」、それは究極的には嬉しいことのはずです。

 

 (17/3/6追記)

二番Bメロの「キスしたい ハグとかいらないから…」のところ、「Addicted To You」の「キスより抱きしめて いきなりやめないで」と対比になってるな、なんて思いました。

Addicted To You」の方は相手と恋愛関係にあって、もうキスなんて済ませているような親密な間柄で、この「ともだち」はそうでないというところで、違いが出てくるんだろうな…。

 

キスとハグ、どっちが真に「愛」をあらわす行為なんだろう。